『機械と工具』 2021年4月号 日本工業出版「プレス金型製作を支える最新ソフトウェアシステム」の記事が掲載されました。

特集 金型加工高度化の最新技術
プレス金型製作を支える最新ソフトウェアシステム

コダマコーポレーション株式会社

1. はじめに
2020年12月号では、「経営のツールとしてのCAD/CAM導入のススメ」と題して、5軸加工への対応などのCAD/CAMシステムの動向と当社の取組みを紹介した。今回はプレス金型製作を支える最新ソフトウェアを紹介させていただく機会をいただいたので、2020年12月に発売したプレス金型の品質と加工の生産性を大きく左右するプレス金型用CADを紹介させていただく。
多くの企業がプレス金型設計の3次元化に取組んでいる。しかし、これまでの3次元CADでは、ブランク展開が困難である、ストリップレイアウトの変更が後工程に反映されないなど、十分な機能を持つシステムがなかった。そのために「金型は2次元で設計する方が早く、3次元化するメリットが無い」という意見が一般的である。
そこで、世界有数のCAD/CAMベンダーであるフランスのTOPSOLID社は、これまでの3次元CADでは実現し得なかった機能とパフォーマンスを持つ順送プレス金型設計支援システムTopSolid’Progressを開発した。従来の3次元CADの処理速度ではレスポンスの問題で対応が難しかった容量が大きなデータでも、TopSolid’Progressでは、処理速度を大幅に高めたことで、快適に設計できるようになった。

2. 順送プレス金型設計支援システム TopSolid’Progress
TopSolid’Progressは、製品の3次元CADデータを活用して、単発、順送、トランスファなどのプレス金型を設計するためのシステムである。ブランク展開、ブランクレイアウトの設計、ストリップレイアウトの設計、金型構造設計のすべてを3次元で行う。(図1)
部品図や部品表は3次元データから自動で作成される。製品モデル、金型の3次元モデル、2次元の金型組立図、部品図は相互に連動し、作業ミスの防止、設計工数の削減と金型製作の生産性の飛躍的な向上に貢献する。(図2)

図1 TopSolid'Progressで設計した順送プレス金型
図1 TopSolid’Progressで設計した順送プレス金型

図1 TopSolid’Progressで設計した順送プレス金型

図2 金型の3次元モデル、自動で作成される図面と部品表

図2 金型の3次元モデル、自動で作成される図面と部品表

3. 製品設計
まず、製品モデルにブランク展開に必要な板金属性(板の表面・裏面・切断面の面属性と曲げ属性)の設定を行う。展開シミュレーションを行う絞り形状自動展開モジュールがオプションで用意されている。FTI社製
モジュールを採用し、製品配置時に、絞り部分も展開することが可能となる。シートメタルの中立面を利用して展開計算を行うため、より正確な結果を得ることができる。(図3)
材質ごとのヤング率、降伏応力、引張強さなどの属性を登録でき、これらを反映した板厚、ひずみ、変形などの解析を行うこともできる。(図4)
絞り形状の展開結果を任意のサーフェス上に適用し、中間工程の形状を容易に作成できるため、順送プレス金型の設計・製作効率を大幅に向上させることができる。(図5)
図3 中立面を利用して展開計算

図3 中立面を利用して展開計算

図4 絞りによる板厚・ひずみ・成形の状態による解析機能

図4 絞りによる板厚・ひずみ・成形の状態による解析機能

図5 中間工程の形状作成

図5 中間工程の形状作成

4. ブランク展開
曲げ部分は、板厚、曲げ角度、曲げ半径などによる伸びしろを考慮したブランク展開モデルを自動で作成する。絞り部分は、さまざまなプレス成形用シミュレーションソフトウェアで作成された形状を利用できる。曲げと絞りが混在している場合、曲げを自動認識し展開計算を適用する。

5. ブランクレイアウト
ブランク展開形状を利用し、1ステージ内での最適なレイアウトを検討できる。ピッチ、角度を任意に設定でき、さらに各々の最短、最大距離等、測定した箇所をすべて画面上で確認し、歩留率を考慮した最適なレイアウトをシミュレートできる。

6. ストリップレイアウト設計
TopSolid’Progressでレイアウト設計をする際には、先ず2次元ステージ上で2次元CADと同じ操作感覚で、自動展開したブランク形状の輪郭と補助線を利用してカットパンチの刃先形状を作図する。次に、ステージ数、ピッチを指定し、この作成した刃先形状を3次元ステージで利用してストリップレイアウトを作成するのである。この手順を踏むことで、自動的にストリップレイアウトに穴があき、実際に材料を打ち抜いているようにストリップレイアウトができあがっていく。
曲げ工程も同様で、複雑な曲げでも実物を曲げているが如く、ストリップレイアウトが完成する。(図6)
カットパンチの形状設計のための2次元ステージと、曲げ加工工程、絞り加工工程や成形加工工程などの設計と、工程位置を決定するための3次元ステージが自動で作成される。3次元ステージには、設計工程が反映されたストリップレイアウトが自動作成される。
TopSolid’Progressを使うことで間違いの無いレイアウト設計を簡単に行えるようになった設計者は、口々に2次元設計には戻れないと言う。
図6 ストリップレイアウトの例

図6 ストリップレイアウトの例

7. 加工工程設計
間接パイロットの場合は2次元ステージで円を配置することで、直接パイロットの場合は2次元ステージのブランク形状から円を選択してパイロット穴の工程位置を3次元ステージで選択することで、ストリップレイアウトにパイロット穴が配置される。
カットパンチ工程の設計は、2次元ステージでカットパンチ形状を製品の輪郭と補助線を利用して定義、カットパンチの工程位置を3次元ステージで選択することでストリップレイアウトが自動作成される。カットパンチ形状や工程位置の変更は、ストリップレイアウトに自動反映される。2次元ステージでは、カットパンチの重積チェックを行える。
曲げ加工工程は、製品の曲げ形状を利用し曲げ加工工程を設計、3次元ステージのストリップレイアウトで加工する工程の曲げエッジを選択して設計する。複数回で加工する場合には、角度を指定すると、ストリップレイアウトが自動で作成される。曲げ加工工程の形状や工程位置の変更は、ストリップレイアウトに自動反映される。
成形加工工程と絞り加工工程は製品の成形加工形状や絞り形状を利用して設計する。3次元ステージのストリップレイアウトの加工工程を絞り形状に置換えると、ストリップレイアウトが作成される。絞り形状の変更や工程位置の変更は、ストリップレイアウトに自動反映される。
さらに、設計したストリップレイアウトの工程毎の荷重と型全体の荷重が視覚的に表示され、解析結果には、カットパンチの大きさの変更やステージの位置変更が自動反映される。
ストリップレイアウトのピッチ変更、アイドルステージの追加、ステージの削除などの変更はいつでも可能である。(図7)

図7 加工工程設計の例

図7 加工工程設計の例

8. 金型構造設計
金型構造設計では、荷重解析を踏まえ、各種のダイセットを選択する。金型構造モデルの平面レイアウトを決定し、ガイドピン、スクリュープラグなどをライブラリから選択して配置し、ガイドなどの設計を行う。カット形状からカットパンチ部品を、曲げ形状から曲げパンチ部品を、絞り形状から絞りパンチ部品を設計する。ミスミの標準部品も用意されている。プレートの穴形状は、パンチ部品や分割ダイとのはめ合いを考慮し自動で作成されるため、単純ミスが防止できる。
TopSolid’Progressは、金型だけでなく、搬送装置を含めた大規模な金型でも高速レスポンスで快適な作業、高速投影による図面作成時間の短縮とファイルの読み込み時間の大幅な短縮を実現している。また、金型の製作前に金型開閉のアニメーションにより金型部品、プレス機やその周辺装置の干渉を事前に検証でき、設計品質を向上させ、手戻りのない金型製作を実現する。(図8、9)

図8 トランスファ金型の開閉アニメーションの様子

図9 干渉を事前に画面で確認

図9 干渉を事前に画面で確認

9. 図面と部品表の作成
TopSolid’Progressは、JIS規格に対応した図面作成機能を有しており、部品点数の多い大物の金型でも圧倒的な処理速度で図面を作成できる。部品点数が5万点のアセンブリの投影図の作成も10秒で行えるほど高速なため、コマンドを選択して図面のファイルが作成された瞬間に、すでに投影図のプレビューが表示されており、レスポンスの遅れはまったくない。
TopSolid’Progressでは、金型構造モデルが作成されれば、ストリップレイアウト、金型、抜きパンチ、ダイ部品、プレートなどの2次元図面は自動生成される。加工する部品だけを選ぶだけで、部品の大きさから用紙サイズを自動選択し、ユーザーが定義したテンプレートに投影図を自動配置する機能が用意されている。表題欄の部品名や日付なども自動で記入されるため、必要な寸法や部分詳細図を追加すれば短時間に部品図面を完成させられる。
2次元図面上で切断線を指定しての断面図の自動作成、部分詳細図の作成が行える。これらの図面は、製品モデル、金型構造モデルに連動しており、設計変更があっても自動的に反映され、修正ミスを防ぐ。そして、それらに含まれる部品が持つ属性から、任意の項目を抽出して部品表を自動的に作成できる。(図10)
部品表はスタイルを選ぶだけで作成でき、スタイルは、ユーザーがカスタマイズできる。TopSolid’Progressで作成されたすべての部品が漏れなくリストアップされ、部品名や規格が自動で記入される。図面上の部品への部品番号の配置も自動である。
金型構造図面、部品図と部品表は、金型構造モデルと連動している。そのため、金型構造モデルや部品モデルを変更すれば、部品表と図面は自動で修正される。修正ミスや修正漏れは発生しない。
図10 TopSolid’Progressで作成した図面と部品表

図10 TopSolid’Progressで作成した図面と部品表

10. PDMを利用したドキュメント管理
TopSolid’Progressは、内蔵のPDMを活用できる。部品をメーカーや部品タイプ、径など複数の情報から検索したり、作成日や製品名などのドキュメントのプロパティから過去の設計データを検索したり、部品や金型情報を素早く検索したりできる。製品形状、金型構造、金型図、部品図、部品表だけでなく、DXF、PDF、他のCADで作成したデータ、図面や資料など設計に関わるすべてのドキュメントを管理できる。部品や成形品を変更すればリビジョンを自動で更新し、旧リビジョンは変更履歴で確認できる。
設計変更時に更新が必要なドキュメントはツリー上で確認できる。変更した部品に関連したアセンブリや図面などはリストで確認できる。
ビューワでは、形状確認と同時にドキュメントのチェックアウト、ライフ サイクル変更、正式版、旧版への変更などの処理内容の説明に対する情報も確認できる。

11. 設計から製造までの一気通貫を実現
TOPSOLID社が開発しているのは、プレス金型CADだけではない。3次元CAD、プラスチック金型用CAD、3軸CAM、5軸CAMなどものづくりをカバーするTopSolidシリーズを開発している。製造業で導入されている多くのシステムには、データの互換性が無く、データ変換時や設計変更時に修正作業が強いられる。TopSolidシリーズの一連のアプリケーションは、同じユーザーインターフェース、同じデータ構造で「設計から製造までのデータの一気通貫」を実現している。これらのすべてのシステムを統合し、プロフェッショナルを単純作業と手戻りから解放する。専門的で創造的な仕事に専念できる、新しいものづくりを実現するために開発されたシステムがTopSolidシリーズである。(図11)
TopSolid’CamとTopSolid’Wireではデータ変換をせずに、TopSolid’Progressで設計した金型のプレートや部品を直ちに加工でき、プレス金型の設計・製作全体の時間を短縮する。
TopSolid’Progressの金型部品には、加工に必要な座ぐり穴やドリル穴、はめあい公差が定義されており、TopSolid’CamによるNCデータの自動作成が可能である。部品の規格を変更した場合、穴の径や深さは自動で変更される。部品の位置を移動すれば、穴も追随する。
TopSolid’Camは、3軸加工はもちろんのこと、3次元CAMシステムでは苦手とされてきた高い精度を要求される穴あけ、2軸加工を強化しているため、高精度な金型部品の加工も効率よく行える(図12)。
部品のポケット、溝、穴の形状や加工精度を自動で認識し、ツールパスを自動で作成できるのも大きな特長である。工具の使用順序や切削条件などの加工条件は、ユーザーが加工ノウハウとして登録できる。システムが画一的にツールパスを作成するのではなく、システムを使い込めば使い込む程に、あたかもユーザー自身が作成したようなツールパスを作成できるのがTopSolidシリーズの特長である。ユーザーを単純な繰り返し作業から解放するとともに、手戻りをなくし、新しい金型づくり、ものづくりを実現する。
また、NCデータを作成した後に設計変更が発生した場合でも、TopSolidシリーズであれば、成形品モデル、金型構造モデル、金型構造図面、部品表、部品図、ツールパス、NCデータのすべてが自動で修正されるため、修正漏れや修正ミスを防止し、手戻りを最小限に抑える。(図13)

図11 ものづくりの全工程をカバーするTopSolidシリーズ

図11 ものづくりの全工程をカバーするTopSolidシリーズ

図12 TopSolid’Camによるプレートの加工のNCデータ作成

図12 TopSolid’Camによるプレートの加工のNCデータ作成

図13 製品モデルの設計変更で金型構造モデルとCAMデータを自動で更新

図13 製品モデルの設計変更で金型構造モデルとCAMデータを自動で更新

12. まとめ
3次元CADを導入するメリットは、部品を含め設計を標準化できることにある。しかし、3次元データは金型そのものの形状を表し、絵でしかない図面と比べ、情報量も作成時間も大きく異なる。そこで、当社では導入時のオンラインによる集合教育の後に個別のコンサルティングを提供している。これは導入企業の実際の金型設計・製作を当社の技術者と共同で進めてもらい、その過程で企業にあった設計手法を確立してゆくものである。
我が国のものづくりでは、高度化、短納期化が加速度的に進んでおり、エネルギーや環境など対応しなければならない課題も増えている。その中で、現在の優位性を保つための1つの解として、コダマコーポレーションはTopSolidシリーズを提案する。